花咲徳栄が埼玉大会決勝で聖望を6-0で破り3年連続の甲子園出場を決めた。注目は、4安打の完封勝利を遂げ、今大会を通じて6試合37イニング無失点、52奪三振を奪った左腕の高橋昂也だ。
身長181、体重83のプロ注目の大型左腕。この日は、連投の影響もあって、制球に重点を置き、4三振止まりだったが、準決勝までの三振奪取率は、脅威の15、43(決勝を含めると12.64)で、あの江川卓氏が、作新学院時代に作った15.34、二刀流、大谷翔平の花巻東時代の15.22も超える数字。決勝では最後のバッターをフォークで見逃し三振に斬ったが、ストレートは最速150キロをマークした本格派で、この日もネット裏に6球団のスカウトがチェックするなど各球団の評価は高く巨人は堤GMまで顔を出していた。
元ヤクルトのスカウト責任者で、宮本慎也や古田敦也らを発掘した名スカウト、片岡宏雄氏も、センバツからの高橋の成長度、安定度に目を見張った。
「高校生の場合、春から夏にどう成長するかをスカウトは追うが、高橋選手は、体格がひと回り大きくなり、安定感が増した。同じ左腕では、木更津総合の早川隆久は、センバツ出場時に比べて、まだ線が細いが、高橋は、急成長している。特に下半身。バランスが重視される投手にとって重要な下半身が鍛えられて馬力を感じる。ボールがぶれない。欲を言えば、キレが欲しいが、ボールの球威は、すでに今年、阪神でブレイクしてきた岩貞クラスはあるだろう。成長度で言えば、今の段階で甲子園を決めたチームのドラフト候補の中では、間違いなくナンバーワンだと思う。こういうノビシロのある選手は、プロに入って大化けする可能性がある。まあ、その逆のパターンにはまる危険性もあるが、素材としては抜群だし、左投手を欲しい事情のあるチームはドラフトで人気の重なる選手の競合を避けて高橋を1本釣りで1位指名してくる可能性もあるだろう。左腕では履正社の寺島成輝などもいるが、ひょっとすると高橋が、隠れ1位候補として浮上してくるのかもしれない」
高橋は、秀岳館に敗れたセンバツ後、肩甲骨の下あたりを痛め、約2か月間、ピッチングができなかった。その間を使い、徹底した下半身強化を行い、自宅から学校まで往復3時間をかけて18キロもある距離を連日、ランニングで通学。プロレスラーばりの太ももになるほど、体つきが変化した。下半身が安定したのでフォームにほとんど、ぶれがなくコントロールの精度が高まった。決勝戦まで6試合で四死球は、わずかに2つ。6回参考記録ながらパーフェクト、ノーヒットノーランもマークしてきた。
ドスンと響くようなストレートが魅力だが、カーブ、スライダー、フォークの変化球の制球力、変化も悪くない。対戦相手のレベルが上がる甲子園で、どんな姿を披露してくれるのか。それだけの三振を奪うのか。埼玉のドクターKの甲子園での躍動が楽しみである。
去年秋、和歌山国体で投げる高橋投手を見て、素晴らしい投手であると実感した。
ところが、春の選抜では腕が振れず、球質がすごく軽いと感じた。ひょっとしたら、故障を隠して投げていたのかもしれない。
春先に力を入れすぎると(夏の新チーム時も同じだが)肩甲骨の下を痛めやすい。体全体を使おうとして、それまで使わなかった筋肉を使おうとしたことが原因ではないか。
投打に充実した花咲徳栄の戦いぶりを期待したい。