東邦(愛知)10-9八戸学院光星(青森)8月14日甲子園2回戦
4点を追う東邦の九回の攻撃。先頭の鈴木光が左前打で出塁。満員の大観衆からは手拍子が続く。しかし、4番・藤嶋が中飛に倒れ2死となった。
涙ぐむキャプテン藤嶋。
このとき、ベンチで「お前ら、声出せよ」と怒鳴ったメンバーがいた。
それは、マネージャーでスコアラーとしてベンチ入りしていた梶浦郁乃。
こんなとき、女は強い。
追い詰められた東邦だったが、甲子園の声援はやまず、タオルを振り回して東邦打線を鼓舞する。球場全体を包む異様な熱気に後押しされるように、中西、高木に連続適時打が生まれ、土壇場で同点に追いついた。
さらに2死二塁。8番の鈴木理は冷静だった。2ボール1ストライク。「1打席目からやられていた、スライダーが来る」。甘く入ったスライダーを芯で捉え、打球は左翼前へ。ついに試合をひっくり返し、劇的なサヨナラ勝ちを決めた。
主将で4番、エースの先発・藤嶋が序盤に相手打線につかまった。2番手の左腕・松山も2点本塁打を浴びた。7点差がついた七回裏、八戸学院光星はエース・桜井をマウンドへ送ってきた。ここで、東邦の森田監督は「さあ、行くぞ」と勝機を見いだした。桜井を想定した直球やスライダーの対策には時間を費やしていた。外角への球を中心に冷静に球を見極めながら、七回に2点、八回に1点を返し、徐々に差を詰めていた。
その粘り強さに、4万7000人で埋め尽くされたスタンドが反応したのだろう。劇的なサヨナラ打の鈴木理は「お客さんが力をくれた。あと、藤嶋だけのチームじゃないって、示せたかな」と興奮冷めやらぬ表情。甲子園という大舞台が、とてつもない底力を高校球児から引き出した。
けど、わたしには、追い詰められた時の女子の粘り強さを思い知らされた一戦だった。