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Channel: 悠々美術館通信
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血汐

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血汐
 
「やわ肌の あつき血汐に ふれも見で さびしからずや 道を説く君」
 
あまりにも有名な与謝野晶子の和歌です。
当時、妻子のあった与謝野鉄幹にぶつけた、体当たりの情熱が感じられる。
 
身体の中を流れる血を、海の潮にたとえた「血汐」という言葉。
血も騒いだり、引いたり、沸き立ったり・・・・・私たちの身体の中にも大自然が存在することを、つくづく感じてしまう。
 
最近は、さらりとしたものが好まれるようで、熱さを伴うこうした言葉の出番は少なくなってきたように思う。
 
潮の満ち引きを無理やり抑え込もうとすれば、やがて氾濫する日もくるかもしれません。
 
心の潮騒に耳を澄ませてみませんか。
 
「海恋し 潮の遠鳴り かぞえては 少女(おとめ)となりし 父母の家」(与謝野晶子)
 
 
 堺から上京した晶子はみだれ髪で短歌の新時代を拓いた。時代の旗手として脚光を浴びた。しかしその華やかな都会の生活の中にふと故郷への思いが生まれたのだろう。
 堺の生家は家の二階にのぼれば海が見えたはずだ。子供のころ晶子は夜寝つくまで父母と遠い波の音を数えながら過ごしたのだろう。東京で脚光を浴びるほどに父母のこと海のことなど望郷の念を歌っている。
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