「蛍」
「明滅の 滅を力に 蛍飛ぶ」
じっと身をかがめて力を蓄える「滅」の時期が、人の一生には幾度となく訪れる。自身には飛ぶための準備であっても、はたから見れば、おそらくは負けてへこんでいるようにしか映らない、辛い時期である。
その風貌から「ライオン宰相」の異名をとった浜口雄幸(1870~1931)は、1929年に発生した世界恐慌の荒波を乗り切るべく構造改革路線を推し進めた。
「明日伸びんがために、今日は縮むのであります」
この言葉は、国民に緊縮・節約を訴えたビラにある言葉だ。
一時は、経営危機も取りざたされた日産自動車が、カルロス・ゴーン社長のもとで業績のV字回復を果たしたとき、よく似た言葉を株主総会の会場に掲げていたのを思い出す。
「最も深くかがんだものが 最も高く飛躍できる」
「滅」の力を信じて雌伏の時に耐える人には、永遠のエールとなるであろう。