… 高い離職率、なり手不足深刻
今年2月、「保育園落ちた日本死ね」との匿名ブログが話題を呼んだ。国は保育所増設を決め、待機児童問題の対策が進んでいるかのようにみえるが、一方で「保育士のなり手不足」は解決の糸口が見いだせず、深刻化し続けている。全産業の平均より約11万円も低い給料や周囲の理解不足。「保育現場」の悲痛な叫びは続いている。
◆低賃金知らず
大阪府の保育士の女性(25)は府内の保育園で週5~6日、午前7時半から働き、家路につくのは午後9時ごろ。一生続けたい仕事だとやりがいを感じるが、月給は手取りで16万円しかない。
幼いころに両親が離婚し、母親と2人で暮らしてきた。短期大学に入学したが、学費を工面できず、日本学生支援機構から有利子の奨学金を借りた。短大では保育士資格と幼稚園教諭免許を取得。卒業後に京都の保育園で働くことになり、1人暮らしを始めた。
給料から家賃と光熱費を支払い、母親に3万~5万円を仕送りすると、手元に残るのは数万円。そんなとき機構から、利子を含め約400万円の奨学金返済が3カ月後から始まるという通知が届いた。月1万数千円の返済でも難しく、返還猶予を申請し、生活を切り詰めて貯金しようとした。
ところが昨年秋、病気を患った母親が家賃を滞納していることを知る。女性は京都の保育園を辞め、大阪の保育園に再就職。母親と同居することにしたが、奨学金の返済の見通しはさらに立たなくなった。
途方に暮れ、相談した区役所の職員に紹介された弁護士から「数年間はクレジットカードの申し込みやローンを組むことができないが、自己破産で借金は帳消しになる」との説明を受け、親子で自己破産することを決めた。女性は言う。
「就職前は保育士が奨学金も返せないほど低賃金だとは知らなかった」