フグの肝はこ言葉にはいい表せないほどの絶妙のうまさがある。
しかし、当たると一発で死に至るほどの毒性を有し、食するのは命懸けだ。
わたしは、フグ毒のテトラドトキシンは、天然ものにあり、養殖物のフグは安全性が高いと考えている。しかし、養殖物のフグでも当たったとも聞いたので、油断はできないと思っている。
現在では、条例で、フグの肝を客に出すことは禁じられているそうだ。
1975年1月16日、歌舞伎役者で人間国宝の坂東三津五郎(八代目)がフグ中毒で亡くなった。(69歳)
この事件は、危険を承知の上で毒性の高いフグの肝を、実に四人前もたいらげた三津五郎がいけなかったのか、フグ調理師免許を持っているはずの板前の包丁捌きがいけなかったのかで、大論争を引き起こしたことでも名高い。
法廷では、「もう一皿、もう一皿」とせがむ三津五郎に板前が渋々料理を出したことが争点となった。
当時はまだ、フグ中毒事件を起こした調理師に刑事裁判で有罪判決が下ることは稀だったが、結局この事件では「渋った」板前が調理を「しくじった」ことに変わりはないとして、業務上過失致死罪及び京都府条例違反で執行猶予付の禁固刑という有罪判決が出て、世間を驚かせている。