「ドイツの徴兵制廃止」
ドイツには長年徴兵制度があり、満18歳以上の男子に兵役の義務があった。
第二次世界大戦の後遺症で国民の反軍感情、反戦意識は根強く、志願制では人員を確保できなかったからである。
徴兵制を実施しながら、良心的兵役拒否も認められていた。この場合、代替義務として病院、老人介護施設等の社会福祉施設で兵役義務と同じ期間だけ社会貢献することになっていた。
ところが、2011年7月4日、ドイツは正式に徴兵制の「中止」を発表した。
2014年までに徴兵制をやめて、職業軍人と志願兵による部隊に再編する計画だ。
ドイツ連邦軍の兵力は現在25万人で、うち5万人は、18歳から25歳の徴兵された
兵士である。
第二次世界大戦後、第一次世界大戦、第二次世界大戦で猛威を振るったドイツが再軍備することについて反対意見が主流を占め、とくにドイツと国境を接するフランスは難色を示した。
たが、これを押し切ったのはアメリカとソ連が対立し、冷戦が起こったためだ。
1955年、ドイツ連邦軍が正式に誕生し
1956年、18歳から45歳までの国民男子全員に兵役の義務が課せられた。
冷戦の間、ドイツ連邦軍はNATOの中央ヨーロッパ防衛の主力となり、陸海空軍で50万人の兵力を保有していた。
2011年、ドイツが徴兵制を廃止することは、緊張の緩和はもちろんヨーロッパの軍事的安定、世界情勢の多極化、など、さまざまな要素が絡まりあってのことだ。
しかし、こうしてみると、戦後の日本が日本国憲法によって徴兵制はおろか戦争を放棄してきたことは特筆に値する。
現在、日本国憲法の見直し論がさかんであるが、そうであるがゆえに、第二次世界大戦をともに戦ったドイツの戦後についてすこし、書いておきたかった。