「メチル水銀」
メチル水銀は、水俣病や新潟水俣病の原因物質として有名だが、水俣病は、ほぼ解決した今も、人類にとって怖い物質であることに変わりはない。
なぜなら、メチル水銀は脂溶性の物質であるため生物濃縮を受けやすい典型的な毒物であるからだ。そのため、食物連鎖の高次を占める捕食者に高度に濃縮されて蓄積される。
メチル水銀はまずプランクトンの体内で濃縮される。プランクトンから小魚、より大きな魚と順次に捕食され、食物連鎖によってメチル水銀はさらに濃縮されることとなる。
生体内からのメチル水銀の排出は遅いため、生体蓄積の程度は高くなる。大きな肉食魚の場合、小魚の100倍ものメチル水銀を保持することになる。
これにより最終捕食者である人間に水俣病が発生した。
現在、アメリカでは胎児に対するメチル水銀の影響を理由に、妊婦がマグロ、金目鯛などの海産物を摂取制限するように勧告している。アメリカでは対象となっていないが、ほかにも、クジラも危険だ。
なぜ妊娠中の女性が、メチル水銀に気を付けなければならないのかは、胎児が、メチル水銀に対して特に敏感だからだ。
メチル水銀は神経系に作用するが,お腹の中の赤ちゃんの神経系は発育中で、その影響を特に受けやすいうえに,お母さんより高い水銀濃度になってしまう。
そのため,妊娠中の女性は過剰なメチル水銀を摂取しないよう特別に注意する必要がある。
生まれた後の子どもは、すでに、特に影響を受けやすい時期を過ぎているので、それほど心配する必要はない。
また,メチル水銀はダイオキシンなどと違って母乳中には出にくいことがわかっていて、授乳中のお母さんも心配する必要はない。