国際連合の安全保障理事会はすべての加盟国が参加する総会より強い権力を持っている。
それは、国連の最大の目的である世界平和と安全の実現を直接担当するのが安全保障理事会であるためだ。
安全保障理事会は15カ国で構成されるが、そのうちの5常任理事国は拒否権という巨大な権力を持っている。
拒否権とは5常任理事国のうち1カ国でも反対すれば安全保障理事会の議決は成立しない。
たとえ14対1であってもだ。
このような事態が2012年2月4日にも起きた。国連安全保障理事会は、シリアのアサド大統領に退陣を求めるアラブ連盟の収拾案を「全面的に支持する」とした決議案を採択した。ところが、常任理事国のロシアと中国が拒否権を行使したため否決された。ロシアと中国は前年10月のシリア非難決議案でも拒否権を行使。今回の決議案は、欧米やアラブ諸国が共同で提出。反体制デモへの弾圧が続くシリアの民主化に向け、アサド大統領に副大統領への権限移譲を求める内容などが盛り込まれており、中ロ以外の理事国13カ国は賛成していた。
一方、ロシアは、シリアの「体制変革」を狙った不適切かつ偏見のある内容だと不満を示した。シリアはロシアにとって重要な武器輸出国である。
アメリカのライス国連大使は、中ロの拒否権行使を「不快」だと異例の強い調子で非難。
「今後のさらなる流血の事態は彼らの責任にある」と述べた。
国連人権高等弁務官事務所は2011年12月、反政府デモへの弾圧で死亡した市民や離反兵士などが5000人を超えたと発表している。
シリア人権監視団は2013年8月末の時点で死者が11万人を超えたと発表した。
2015年9月、ロシアは武装勢力に対する空爆をシリアで開始した。アメリカが主導する連合軍も2014年9月からほぼ毎日、シリア国内における過激派「イスラム国(IS)」の拠点壊滅を目指して空爆を実施している。
内戦状態にあるシリアでは2011年以降、25万人以上の死者が出ているが、ロシア軍の介入で、情勢はますます不透明となった