流石(さすが)
3世紀、中国・晋の時代、孫楚(そんそ)は親友の王済(おうさい)に「世を捨てて、流れに漱(すす)ぎ、石に枕する暮らしがしたい」と言おうとしたが、間違って「石に漱ぎ、流れに枕す」と言ってしまった。
誤りを指摘されたところ、「流れに枕する」のは耳を洗うため、「石に漱ぐ」のは歯を磨くためだと言い張ったので、王済は「流石だ」と言ったそうだ。
夏目金之助が「漱石」というペンネームを用いたのは、この故事にちなんだものだ。
しかし、本当は、この話には伏線があって、中国には皇帝の位を譲るといわれたときに「耳が汚れた」と言って川で耳を洗ったそうだ。
真の偉人は、無欲で高潔であるという故事をふまえて、言い間違ったときにも、とっさの対応ができることを「流石だ」と言ったのであって、こじつけが流石ではないのだ。