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Channel: 悠々美術館通信
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至芸

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至芸
 
貧しい人生なので、芸術を楽しむ余裕はなかったが、今後は芸術にも触れていきたいと願っている。
 
芸術を極めるということは、たいへんな労苦がともなうのではないかと思っていたが、歌舞伎で至芸をうたわれた六代目尾上(おのえ)菊五郎は、声の弱い欠点を絶妙のセリフ回しを完成することで克服した。
目の小さかった初代中村吉右衛門は、見得の時に口をカッと開けて独特の華を編み出した。
 
世間を見回しても、順風満帆で世を渡ってきたあの人、この人の刻みの浅い人生観がいかにつまらないか。
 
作家の山本周五郎は次のように指摘している。
「芸というものは、八方円満、平穏無事、波風立たずという環境で育つものではない。あらゆる障害、圧迫、非難、嘲笑を浴びせられて、それらをつきぬけ、押し破り、戦いながら育つものだ。(「虚空遍歴」)
 
順風満帆の人生では芸に陰翳が出ないので、至芸には至らない。
 
欠点、短所、キズ・・・「負い目」もまた天の恵みといえる。
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