サマセット・モーム(1874~1965)
「愛してもいない男に言い寄られるときほど、女が残酷になれるときはない」
(「月と6ペンス」1919)
作家として成功する前、サマセット・モームは医者をしていた。「人間性を学ぶ上で大いに役立った」と、エッセイの中で述べている。
恋は、お釈迦様でも草津の湯でも治らない難治の病とよく言われる。モームの洞察とよく似た内容の俗謡が日本にはある。
「いやなお方の親切よりも 好きなお方の無理がよい」
親切にして、残酷な仕打ちを受けて、愛されていない男ほど哀しい存在はない。
女から残酷な扱いを受けたときに歌える歌が一つあった。国語学者の金田一春彦(1913~2004)が高校生の時に作詞・作曲した「浦和高等学校自治寮音頭」だ。
「チャチな恋して傷つく奴は 牛に蹴られて 猫にかまれて 死ねばいい」
この歌詞は「不適切」との評価が下り、曲はそのままで詩だけ「春の武蔵野 若葉の陰に
男の子歌うよ ホラ朗らかに」という健全な内容に改変されている。